現代中国語描写文法
第三節
形式と意味 2
二 文法的形式と文法的意味
文法的意味が表現されている形式を文法的形式という。文法的意味と文法的形式とは密接に関係している。ある文法的形式とある文法的意味とが組み合わさると、文法というカテゴリーになる。カテゴリーは範囲とは異なる。文法カテゴリーとは、文法の機能分類のことで、形式によって示される必要がある。文法的形式は、その表現する意味と切り離すことはできない。
・単数形の名詞の後に付けて複数形を表す
・動詞の後に付けて三人称単数の現在形を表す
中国語の「了」は下記の文法形式である:
・動詞の後に付けて「完了」を表す
・文末に付けて「新しい状況」を表す
もちろん、文法的意味も文法的形式とは切り離すことはできない。例えば、中国語において疑問を表す語気の基本となる表現形式はイントネーションである。この他に語気助詞、語気副詞及び構文変化等の形式によっても表現される。
注目すべきは、ゼロ形式(zero)である。例えばsheep(羊)とdeer(鹿)の単数形と複数形が同形である。これを形式体系の観点から説明すると、「単数形+ゼロ」で複数形になったと考えることができる。NPにより名詞句を、VPにより動詞句を表すのが一般的であるが、個々の名詞をNP、個々の動詞をVPに分類することで、これらは「ゼロ修飾語」を伴っていると認めることを意味する。
ある意味が、A言語では文法形式によって表現され、B言語では語彙形式によって表現されるということはよくある。例えば、名詞に性別の文法カテゴリーがある言語もある。これは中国語おいてはない。中国語では、人や動物の性別を区別するために「男、女、雌、雄」等を用いる。これは語彙形式である。
中国語の文法形式には、以下のようなものがある:
・接辞の付加
・語根の重ね型
・語順及び虚詞の使用 等
文法的意味を示すためには、それぞれの特定の文法的形式が特定の言語単位と結びついていなければならない。
例えば、単独では意味をなさない介詞(前置詞)「把」と「被」は、句において用いると、以下のような機能を発揮する。
・「被」の後ろに置かれる文が動作主となる
また、「呢」や「吗」も、単独では意味をなさないが、文末に用いることで、その機能を発揮し、疑問の語気を表すことができる。
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■出典:
書名:現代中国語描写文法(现代汉语描写语法)
主編:張斌
出版社 : 商務印書館
出版日期 : 2010年10月10日
言語:中国語
ページ数:1306ページ

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